心筋症とは
心筋症の種類
心筋(心臓の筋肉)に異常をきたし、心臓の働きが障害されている病気です。心筋症には様々な疾患が含まれますが、代表的な疾患として拡張型心筋症、肥大型心筋症、拘束型心筋症やアミロイドーシスやサルコイドーシス、ファブリー病などの全身の病気に伴って心筋の障害を起こすものもあります。以下、代表的な心筋症である拡張型心筋症、肥大型心筋症、拘束型心筋症についてご説明します。
拡張型心筋症
心筋の収縮力が低下し、左心室が拡大することでポンプ機能が低下する心筋症です。これにより、動悸、息切れ、むくみ、疲労感などが現れます。進行すると、不整脈や血栓による塞栓、心不全を引き起こしやすく、予後はあまり良くありません。原因は不明なことが多いですが、治療には薬物療法や致死性不整脈が見られる場合は植込み型除細動器が使用されます。根本的な治療には心臓移植が必要です。
肥大型心筋症
心筋の肥大によって、左心室の壁が厚くなる心筋症です。症状として、胸痛、動悸、息切れ、めまい、失神などが見られます。心不全や重い不整脈を引き起こすことがあり、進行すると拡張型心筋症に移行することもあります。治療は薬物療法に加え、経皮的中隔心筋焼灼術や心室中隔切除術といった手術、致死性不整脈が見られる場合は植込み型除細動器の使用が考慮されます。また、激しい運動は制限されることがあります。
拘束型心筋症
心室の壁が硬くなり、十分に拡張できなくなる心筋症です。日本では稀ですが、アフリカや中南米、インド、一部のアジアで多く見られます。動悸、息切れ、むくみなどの症状が現れます。多くの場合、根本的な治療法はありませんが、薬物療法を用いて症状の緩和を図ります。
心筋症の主な症状
心筋症に初期症状・前兆は
ある?
初期の段階ではほとんど症状がなく、前兆が現れないことが多いです。しかし、進行に伴い、以下のような心不全の症状が現れます。
- 動悸、息切れ
- 足のむくみ
- 疲れやすさ
- めまい
- 夜間の咳や息苦しさ
- 食欲不振
- 失神
さらに進行すると、室内での歩行が困難になり、寝たきりになることもあります。
心筋症の原因
拡張型心筋症の原因
拡張型心筋症の原因は多岐にわたります。遺伝的要因が最も一般的で、家族性に発症することがあります。その他、ウイルス感染やアルコールの過剰摂取、高血圧、心臓の弁疾患、糖尿病、甲状腺疾患、薬物や化学物質が原因となることもあります。原因が不明な場合も多く、その場合は特発性と呼ばれます。
肥大型心筋症の原因
肥大型心筋症の主な原因は遺伝によるものです。家族に同じ病気の人がいる場合、遺伝的に発症することがあります。また、高血圧や糖尿病、過度の運動、アルコールの摂取が原因となることもありますが、多くの場合は遺伝が大きな影響を与えています。
拘束型心筋症の原因
拘束型心筋症の原因には、心臓の収縮や機能に関わるタンパク質を作る遺伝子に変異が関与していることがあります。しかし、多くの場合、その原因を特定することは難しく、はっきりとした原因が分からないことが一般的です。
ストレスと心筋症の関係
心筋症の中には、たこつぼ型心筋症(ストレス心筋症)に分類されるものがあります。はっきりとした原因が解明されていませんが、強いストレスが引き金となり、カテコールアミンというホルモンが増加することが発症に関与していると考えられています。心臓のポンプ機能が一時的に低下しますが、適切な治療を行うことで、2〜3週間で回復することがほとんどです。急性期の治療が特に重要になります。
心筋症の診断方法
確定診断は、心エコー検査で行います。エコー検査では、心筋の厚さや内径、収縮力などを短時間で調べることができます。より正確な診断が求められる場合には、心臓カテーテル検査、心筋生検が行われます。その他、血液検査、核医学検査などが行われることもあります。
心筋症の治療法
心筋症の治療の中心は、薬物療法です。もし心筋症の原因や関連する病態が特定されていれば、その治療が優先されます。心筋症として病態が完成した場合は,いわゆる“心不全”に対する一般的な治療概念があてはまります。
薬物療法
拡張型心筋症
拡張性心筋症に対しては、ACE阻害薬/アンジオテンシン受容体拮抗薬(ARB)、β遮断薬を忍容性がある限り最大限用い、これらにミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(MRA)を追加した薬物療法が標準的な薬物治療となります。また、近年ではSGLT2阻害薬、アンジオテンシン受容体ネプリライシン阻害薬(ARNI)、イバブラジン等の新規の心不全治療薬の併用も考慮します。
肥大型心筋症
肥大心筋症については、症状で閉塞機転を認めない肥大型心筋症患者には確立した治療法はありませんが、息切れなど心不全症状が現れた場合、β遮断薬や少量の利尿薬が使用されることがあります。閉塞性肥大型心筋症に対しては、β遮断薬やIa群抗不整脈薬を用いて、左室内の閉塞を軽減し、症状の改善を目指します。
拘束型心筋症
拘束型心筋症に対しては、確立された根治的治療は無く、うっ血に対しての利尿薬による薬物治療が主となります。
薬物治療のみでは心機能が改善せず、心不全症状が持続する場合は非薬物治療を考慮します。ペースメーカーや植え込み型除細動器による治療、カテーテル治療、心臓移植などが必要になった場合には、速やかに提携する病院へとご紹介します。